相手から「ありがとうございます」と感謝の言葉をかけられた時、謙遜の気持ちを込めて「いえいえ、とんでもないです」と返した経験はありませんか? 非常に丁寧で、広く使われているこの表現ですが、ふとした瞬間に、「『とんでもないです』って、文法的に本当に正しいのかな?」「目上の方に使っても失礼にあたらないだろうか?」と、その使い方に疑問を感じることもあるかもしれません。この記事では、「ありがとうございます」という感謝の言葉に対する返事として「とんでもないです」は適切なのか、その正しい意味と使い方、そしてビジネスシーンで使える、より洗練された言い換え表現や返し方について、皆さんの疑問に寄り添いながら、分かりやすく解説していきます。
言葉のキャッチボールをスムーズに行うことは、良好な人間関係を築く上で非常に重要です。相手の感謝の気持ちを、敬意を持って受け止め、謙虚な姿勢を示すための言葉選びを知ることで、あなたのコミュニケーションはより円滑になるでしょう。この記事を読めば、「とんでもないです」に関する疑問が解消され、自信を持って、そしてスマートに感謝の気持ちに応えられるようになるはずです。
「とんでもないです」の基本的な意味と文法的な背景
まず、「とんでもないです」という言葉が持つ基本的な意味と、なぜその使い方が議論されることがあるのか、その文法的な背景から見ていきましょう。
「とんでもないです」が持つ三つの意味
「とんでもないです」は、相手の言葉に対して、それを強く否定したり、謙遜したりする際に使われる言葉で、主に以下の三つの意味合いで使われます。
- 強い否定:
- 相手の発言が「全く違う」「滅相もない」と、強く否定する意味。
- 例:「私が犯人だなんて、とんでもないです!」
- 賞賛や感謝に対する謙遜:
- 相手からの褒め言葉や感謝に対して、「いえいえ、それほどではありません」「たいしたことではありません」と謙遜する意味。
- 例:「素晴らしいプレゼンでしたね」「いえ、とんでもないです。」
- 謝罪に対する応答:
- 相手からの謝罪に対して、「気にしないでください」「大丈夫ですよ」と、相手の気持ちを和らげる意味。
- 例:「遅れてしまって申し訳ありません」「とんでもないです、私も今来たところです。」
「とんでもないです」は文法的に間違い?
「とんでもないです」という表現は、厳密な文法上は「誤用」とされていますが、現在では慣用表現として広く定着しており、ビジネスシーンで使っても問題ないとされています。
- 文法的な解説:
- 「とんでもない」は、「とんでも」と「ない」に分けられない一つの形容詞です。
- そのため、形容詞「美しい」を「美しくないです」と丁寧に言うように、「とんでもない」を丁寧に言う場合は「とんでもないことです」「とんでもございません」が、本来の正しい形とされてきました。
- 慣用表現としての定着:
- しかし、文化庁の「敬語の指針」などでも、「とんでもないです」は、相手の言葉を軽く打ち消す、丁寧な言い方として広く使われている実態が認められています。
- そのため、現代のビジネスコミュニケーションにおいては、「とんでもないです」を使っても、一般的に失礼にあたることはありません。
| 表現 | 文法的な正しさ | 現代での使われ方 |
|---|---|---|
| とんでもないです | △(厳密には誤用) | ◎(慣用表現として広く定着。ビジネスでも使用可) |
| とんでもないことです | 〇(正しい形) | 〇(より丁寧で、改まった印象) |
| とんでもございません | 〇(正しい形) | ◎(「とんでもないです」と同様に、丁寧な表現として広く使われる) |
「ありがとうございます」への返事としての「とんでもないです」
感謝の言葉「ありがとうございます」に対して、「とんでもないです」と返すのは、どのような心理やニュアンスが込められているのでしょうか。
感謝に対する謙遜の表現
「ありがとうございます」に対して「とんでもないです」と返すのは、「お礼を言われるほどのことはしていませんよ」という、日本文化特有の謙遜の気持ちを表しています。
- 「いえいえ とんでもないです」のニュアンス:
- 相手からの感謝を、そのまま受け取るのではなく、「当然のことをしたまでです」「大したことではありません」と、一度謙遜することで、相手への敬意や、へりくだった姿勢を示します。
- ビジネスシーンでの有効性:
- 特に、ありがとう とんでもないです ビジネスシーンにおいて、上司や取引先からの感謝に対してこのように返すと、謙虚で誠実な印象を与えることができます。
「とんでもないです」以外の返事のバリエーション
「ありがとうございます」への返事は、「とんでもないです」以外にも、状況に応じて様々なバリエーションがあります。
- 「どういたしまして」:
- 最も基本的な返事ですが、目上の方に使うと失礼にあたるとされる場合があります。同僚や後輩、親しい間柄で使うのが無難です。
- 「お役に立てて光栄です」:
- 目上の方に対して、感謝の言葉を受け止めつつ、謙虚な気持ちと喜びを伝えるのに最適な表現です。
- 「喜んでいただけて何よりです」:
- 相手が喜んでいることに焦点を当て、共感を示す温かい表現です。
- 「こちらこそ、ありがとうございます」:
- 相手との共同作業など、こちらにも感謝すべき点がある場合に使うと、より円滑なコミュニケーションになります。
状況別:「とんでもないです」のスマートな使い方と返し方
「とんでもないです」は、感謝の場面だけでなく、謝罪された時や、褒められた時にも使われます。それぞれの状況で、どのように使い、どのように返せば良いのかを見ていきましょう。
1. 謝られた時の「とんでもないです」
相手から「申し訳ありません」と謝罪された時に、「とんでもないです」と返すのは、「気にしないでください」「大丈夫ですよ」という、相手を気遣う優しいニュアンスになります。
- 使い方:
- 相手:「ご迷惑をおかけし、申し訳ございません。」
- 自分:「とんでもないです。どうぞお気になさらないでください。」
- 「とんでも ない です 大丈夫 です」の組み合わせ:
- 「とんでもないです、大丈夫ですよ」と続けることで、より明確に相手の心配を和らげることができます。
- 「とんでもないです」と言われた時の返し方:
- 相手が「とんでもないです」と返してくれたら、改めて「ありがとうございます。今後は気をつけます」と、感謝と反省の意を伝えると、より丁寧です。
2. 褒められた時の「とんでもないです」
上司や取引先から「素晴らしい成果ですね」と褒められた時に、「とんでもないです」と返すのは、謙遜の気持ちを表します。
- 使い方:
- 相手:「今回のプロジェクト、大成功でしたね。お見事です。」
- 自分:「とんでもないです。皆様のご協力のおかげです。ありがとうございます。」
- 謙遜+感謝+他者への配慮:
- ただ謙遜するだけでなく、「ありがとうございます」という感謝の言葉と、「〇〇さんのおかげです」といった、チームや他者への配慮を付け加えるのが、ビジネスにおけるスマートな返し方です。
- 「とんでもないです」と言われた時の返し方:
- 相手が謙遜して「とんでもないです」と言ったら、「いえいえ、本当に〇〇さんの力が大きかったですよ」と、改めて具体的に褒めるポイントを伝えると、相手の自己肯定感を高めることができます。
3. 感謝された時の「とんでもないです」
「ありがとうございます」と感謝された時の「とんでもないです」は、謙遜の表現です。
- 使い方:
- 相手:「助かりました。ありがとうございます。」
- 自分:「いえいえ、とんでもないです。お役に立てて嬉しいです。」
- 「とんでもないです」と言われた時の返し方:
- 相手が謙遜して「とんでもないです」と言ったら、「いえ、本当に助かりましたので」「こちらこそ、お声がけいただきありがとうございました」など、重ねて感謝の気持ちを伝えると、より丁寧な印象になります。
「とんでもないです」に関するよくある質問
「とんでもないです」という言葉の使い方について、皆さんが疑問に思われがちな点についてQ&A形式で解説します。ここでの情報が、皆さんの疑問を解消する一助となれば幸いです。
「とんでもないです」は失礼ですか?
いいえ、「とんでもないです」は、現代のビジネスシーンにおいて、一般的に失礼にはあたりません。文法的には「とんでもないことです」「とんでもございません」がより正しいとされていますが、「とんでもないです」は慣用表現として広く定着しており、目上の方に使っても問題ないとされています。感謝、謙遜、謝罪への応答など、幅広い場面で使える便利な敬語表現です。
お礼を言われた時の返し方は「とんでもないです」ですか?
お礼を言われた時の返し方として、「とんでもないです」は非常に一般的で、適切な表現の一つです。これは、「お礼を言われるほどのことはしていません」という謙遜の気持ちを示すためです。
その他にも、「お役に立てて光栄です」「喜んでいただけて何よりです」といった、よりポジティブな表現や、「こちらこそありがとうございます」といった、相手への感謝を返す表現も、状況に応じて使い分けると良いでしょう。
ありがとうの返事の返し方は?
「ありがとう」への返事の返し方は、相手との関係性や状況によって様々です。
- 目上の方へ: 「とんでもないです」「お役に立てて光栄です」
- 同僚や対等な相手へ: 「どういたしまして」「いえいえ」
- 親しい友人へ: 「ううん、気にしないで」「いいってことよ」
感謝の気持ちを、謙虚に、そして誠実に受け止める姿勢が大切です。
お礼に対して「とんでもない」は使える?
「ありがとう」に対して、「とんでもない」と単体で使うのは、ややぶっきらぼうで、カジュアルすぎる印象を与える可能性があります。
親しい間柄であれば問題ありませんが、ビジネスシーンや目上の方に対しては、必ず「とんでもないです」や「とんでもないことです」といった、丁寧な形(敬語)で使うようにしましょう。
まとめ
相手からの感謝の言葉「ありがとうございます」に対する返事として、「とんでもないです」は、謙遜の気持ちを表す、現代のビジネスシーンにおいて広く使われている適切な敬語表現です。文法的には「とんでもないことです」や「とんでもございません」がより正しいとされていますが、「とんでもないです」を使っても、一般的に失礼にあたることはありません。
「とんでもないです」は、感謝された時だけでなく、謝られた時には「気にしないでください」という相手を気遣う意味で、褒められた時には「それほどではありません」という謙遜の意味で、幅広く使うことができます。
ただし、「とんでもないです」と謙遜するだけでなく、
- 「お役に立てて光栄です」
- 「ありがとうございます。皆様のおかげです」
- 「どうぞお気になさらないでください」
といった、ポジティブな言葉や、相手への配-慮、感謝の言葉を付け加えることで、よりスマートで、心のこもったコミュニケーションが実現します。
この記事を通じて、「とんでもないです」という言葉の正しい意味と使い方、そして状況に応じた適切な返し方についての疑問が解消され、ご自身のビジネスシーンや日常生活において、自信を持って円滑な人間関係を築くための一助となれば幸いです。


