日常会話で耳にする機会は少ないかもしれない「おくんなまし」という言葉。時代劇や時代小説などで見聞きしたことがある、という人もいるのではないでしょうか。どこか古風で、やわらかい響きを持つこの言葉には、どんな意味があり、どのように使われるのでしょうか。この記事では、言葉の由来から使い方、男女別の使用例までを詳しく解説します。
「おくんなまし」ってどんな意味?丁寧な依頼表現を紐解く
「おくんなまし」は、動詞「おくる(送る、寄越す)」に、丁寧な助動詞「~なまし」がついた言葉です。「~なまし」は、古語の「~なむ(~してほしい)」の丁寧な言い方で、願望や依頼の気持ちを込めた表現です。つまり、「おくんなまし」は、「送ってほしい」「寄越してほしい」という気持ちを、より丁寧に、やわらかく表現した言葉ということになります。
現代語の「ください」と意味は似ていますが、「おくんなまし」は、より古風で上品な印象を与えるため、日常会話ではあまり使われません。時代劇や時代小説、演劇などで、登場人物のセリフとして使われることが多いです。また、ご年配の方が親しい間柄で使う場合もあります。
語源を探る。「~なまし」のルーツと歴史的背景
「おくんなまし」に使われている「~なまし」は、平安時代から使われていた歴史のある言葉です。もともとは、天皇や貴族などの身分の高い人々が、相手に何かを依頼する際に使っていました。その後、時代が下るにつれて、一般の人々にも広まりましたが、やはり丁寧な言葉遣いとして、特別な場面で使われることが多かったようです。
現代では、「~なまし」のような言葉を日常的に使うことはありませんが、この言葉が持つ上品さや古風な趣は、今もなお多くの人に魅力的に感じられています。
「おくんなまし」はどこの方言?地域による言葉の変遷
「おくんなまし」は、特定の方言というわけではありません。古語に由来する言葉のため、日本全国で使われていた表現です。ただし、地域によっては、「おくんなさい」「おくんなはれ」など、似たような意味の方言が使われていることがあります。これらは、「おくんなまし」がそれぞれの地域で変化した、あるいは影響を受けた言葉と考えることができます。
たとえば、「おくんなはれ」は、関西地方でよく使われる表現です。このことから、「おくんなまし」が、方言として各地で変化した可能性が示唆されます。
男性の「おくんなまし」はアリ?時代劇のイメージと使い分け
時代劇などでは、男性が「おくんなまし」を使うシーンがよく見られます。これは、時代劇の登場人物が、武士や身分の高い男性であることが多いためです。ただし、現代において、男性が日常会話で「おくんなまし」を使うのは、少々場違いに感じるかもしれません。
現代では、男性が丁寧な依頼をする場合は、「ください」や「いただけますか」を使うのが一般的です。しかし、あえて「おくんなまし」を使うことで、相手に古風で上品な印象を与えたり、ユーモラスな雰囲気を演出したりすることも可能です。使う場面を選ぶことが重要です。
「おくんなまし」の具体的な使用例をチェック
「おくんなまし」は、具体的にどのような場面で使われるのでしょうか。いくつか例を挙げてみましょう。
- 手紙や文章での使用例:
- 「資料をおくんなまし。」(資料を送ってほしい、という丁寧な依頼)
- 「ご返信おくんなまし。」(返信をほしい、という丁寧な依頼)
- 「お便りおくんなまし。」(手紙を送ってほしい、という丁寧な依頼)
- 時代劇や演劇での使用例:
- 「お茶をおくんなまし。」(お茶を持ってきてほしい、という丁寧な依頼)
- 「刀をおくんなまし。」(刀を持ってきてほしい、という丁寧な依頼)
- 「お話をきかせておくんなまし。」(話を聞かせてほしい、という丁寧な依頼)
これらの例からもわかるように、「おくんなまし」は、目上の人や、より丁寧な表現を心がけたい相手に対して使われる言葉です。
今風にアレンジ?「おくんなまし」の現代的な使い方
「おくんなまし」は、基本的に現代の日常会話では使われません。しかし、その古風で上品な響きは、あえて使うことで、相手に特別な印象を与えることができます。たとえば、演劇や創作活動において、キャラクターの個性を際立たせるために「おくんなまし」を使うことがあります。
また、SNSなどで、ジョークやユーモアを交えて使う場合もあります。ただし、使う場面や相手によっては、不自然に感じられる可能性もあるため、注意が必要です。
「おくんなまし」と似た言葉一覧
「おくんなまし」をより深く理解するために、似ている言葉を見ていきましょう。
- 「ください」:最も一般的な丁寧な依頼表現。「おくんなまし」よりも日常的に使われます。
- 「~なさい」:依頼や指示を表す表現。「おくんなまし」よりもやや強いニュアンスがあります。
- 「~くださいませ」:「ください」をさらに丁寧に言った表現。「おくんなまし」に代わる丁寧な表現として使われることがあります。
- 「~たもれ」:古語の依頼表現。「おくんなまし」と同様に、古風な印象を与える言葉です。
これらの言葉と「おくんなまし」を比較することで、それぞれの言葉が持つニュアンスの違いや、どのような場面で使うのが適切かを理解することができます。
よくある質問
「おしげりなまし」の意味は?花魁言葉なの?
「おしげりなまし」は、「惜しがる」という意味の動詞「おしげる」に、願望や希望を表す古語の助動詞「なまし」がついた言葉です。つまり、「惜しんでほしい」「惜しまれてほしい」という気持ちを表します。花魁言葉と特定されるものではなく、古風で丁寧な言葉遣いの一つで、時代劇や歴史小説などで使われることがあります。花魁が使う場合もありますが、身分の高い女性や武士、年配者など、特定の人物に限らず用いられました。現代では日常会話で使われることはほとんどありませんが、文学作品や演劇などでその表現を見ることができます。
まとめ:「おくんなまし」は古風な丁寧さを表現する言葉
「おくんなまし」は、古語に由来する、丁寧な依頼表現です。現代では日常会話で使われることは少ないですが、時代劇や時代小説、演劇などで、登場人物のセリフとして使われることが多いです。また、あえて現代で使うことで、古風で上品な印象を与えることも可能です。言葉のルーツや意味、使い方を理解し、「おくんなまし」の持つ独特なニュアンスを、それぞれのシーンで活かしてみてはいかがでしょうか。
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