ビジネスシーンにおいて、一度はこちらから「ぜひお願いします」と依頼したものの、その後の状況変化により、やむを得ずその依頼を取り下げなければならない、という気まずい状況に直面したことはありませんか? 「こちらからお願いしておきながら、どう断れば失礼にあたらないだろうか」「角が立たないように、丁寧にお断りのメールを書きたいけど、どんな言葉を選べば良いんだろう?」と、その伝え方に頭を悩ませる方は少なくないでしょう。この記事では、こちらからお願いした案件をやむを得ず断る際の、失礼のないメールの書き方、相手への配慮が伝わる敬語表現、そして具体的な状況別の例文について、皆さんの疑問に寄り添いながら、分かりやすく解説していきます。
一度お願いしたことを断るのは、非常に心苦しいものです。しかし、誠実な対応と丁寧な言葉選びを心がけることで、相手の理解を得て、今後の良好な関係を維持することは十分に可能です。この記事を読めば、気まずい「お断り」の場面に関する疑問が解消され、自信を持って、そして誠意をもってお断りの連絡ができるようになるはずです。
なぜ「こちらからお願いしたのに断る」状況が起こるのか
まず、こちらからお願いした案件を、後から断らなければならなくなるのは、どのような状況なのでしょうか。その背景を理解することで、お断りのメールを書く際の心構えも変わってきます。
1. 状況の変化によるやむを得ない理由
最も多いのが、依頼した時点では予測できなかった、社内外の状況変化によるものです。
- 社内事情の変化:
- 予算の削減、プロジェクト方針の変更、担当者の交代など、社内の都合で依頼を継続できなくなるケース。
- クライアントからの変更要求:
- 依頼の元となったクライアントからの要求が変更され、その結果、お願いしていた作業が不要になるケース。
- 市場や競合の動向変化:
- 市場の動向が変わり、依頼していたプロジェクト自体の優先順位が下がったり、中止になったりするケース。
2. 複数の選択肢を比較検討した結果
例えば、複数の業者に見積もりを依頼したり、複数の候補者に面接を依頼したりした結果、最終的に一社(一人)に絞り込む、というケースです。
- 相見積もりの結果:
- 複数の企業から見積もりを取り、価格や提案内容を比較検討した結果、他社に決定した場合。
- 採用選考の結果:
- 複数の候補者と面接を行い、より自社の要件に合致する人材を採用した場合。
これらの状況は、ビジネス上、ごく自然に発生するものです。大切なのは、断るという事実を、いかに誠実に、そして相手への配慮を持って伝えるか、という点です。
失礼のないお断りメールの基本構成と書き方のポイント
こちらからお願いしたことを断るメールは、通常のビジネスメール以上に、丁寧さと配慮が求められます。相手の気分を害さず、良好な関係を維持するための、基本構成と書き方のポイントを見ていきましょう。
1. お断りメールの基本構成
お断りメールは、以下の5つの要素で構成するのが基本です。
- 件名: 「〇〇の件(株式会社△△ 〇〇)」のように、誰から、何の件についてのメールかが一目で分かるようにします。
- 宛名: 会社名、部署名、役職、氏名を正確に記載します。
- 挨拶と感謝: まず、対応していただいたことへの感謝の気持ちを伝えます。
- お断りの意思表示とお詫び: 結論として、今回は見送らせていただく旨を、お詫びの言葉と共に明確に伝えます。
- 結びの言葉: 今後の良好な関係を願う言葉で締めくくります。
2. 好印象を保つための書き方のポイント
角が立たないように、そして相手への敬意を示すための、書き方のポイントです。
- 結論は明確に、しかし丁寧に:
- 曖昧な表現は避け、「今回は見送らせていただくことになりました」「辞退させていただきたく存じます」といったように、お断りの意思は明確に伝えます。
- クッション言葉を活用する:
- 「誠に申し訳ございませんが」「大変恐縮ですが」「甚だ勝手ではございますが」といったクッション言葉を文頭に置くことで、言葉の印象を和らげることができます。
- 断る理由は簡潔に(場合によっては不要):
- 断る理由は、相手を傷つけない範囲で、簡潔に伝えるのが基本です。「予算の都合上」「社内で検討の結果」など、当たり障りのない表現で十分です。
- 詳細な理由を説明する必要はありません。場合によっては、理由を述べない方が誠実な場合もあります。
- 感謝の気持ちを伝える:
- 見積もり作成や、面接のために時間を割いていただいたことへの感謝を、改めて丁寧に伝えましょう。
- 今後の関係性を示唆する言葉:
- 「また別の機会がございましたら、ぜひご相談させていただけますと幸いです」といった、今後の関係を閉ざさない一言を添えることが、非常に重要です。
- 迅速に連絡する:
- 断ることが決まったら、できるだけ早く連絡するのがマナーです。相手は、あなたの返事を待って、スケジュールやリソースを確保している可能性があるためです。
状況別:「こちらからお願いしておきながら断る」メール例文
具体的な状況に応じた、丁寧なお断りメールの例文をご紹介します。
1. 見積もりを依頼した後に断る場合
| 件名 | Re: 〇〇のお見積もりの件(株式会社△△ 〇〇) |
|---|---|
| 本文 | 株式会社□□ 〇〇部 〇〇様 いつもお世話になっております。 株式会社△△の〇〇です。 先日は、「〇〇」のお見積もりをご提出いただき、誠にありがとうございました。 迅速にご対応いただきましたこと、重ねて御礼申し上げます。 社内で慎重に検討を重ねました結果、誠に申し訳ございませんが、今回は見送らせていただくこととなりました。 ご期待に沿えず、大変恐縮です。 また別の機会がございましたら、ぜひご相談させていただけますと幸いです。 今後とも、変わらぬお付き合いのほど、何卒よろしくお願い申し上げます。 (署名) |
2. 依頼を取り下げるメール(社外向け)
一度正式に依頼した業務を、社内事情の変更などにより取り下げなければならなくなった場合の例文です。
| 件名 | 【〇〇の件】ご依頼取り下げのお詫び(株式会社△△ 〇〇) |
|---|---|
| 本文 | 株式会社□□ 〇〇部 〇〇様 いつも大変お世話になっております。 株式会社△△の〇〇です。 先般ご依頼いたしました「〇〇」の件につきまして、誠に恐縮ながら、弊社の都合により、今回の依頼を取り下げさせていただきたく、ご連絡いたしました。 〇〇様には、すでにご準備を進めていただいている中、こちらからお願いしたにもかかわらず、このようなご連絡となり、多大なるご迷惑をおかけいたしますこと、心よりお詫び申し上げます。 甚だ勝手なお願いで誠に申し訳ございませんが、何卒ご容赦いただけますようお願い申し上げます。 今後、このようなことがないよう、社内の連携を徹底してまいりますので、 引き続きご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。 (署名) |
3. 面接を依頼した後に辞退する場合(採用選考)
| 件名 | 〇月〇日 採用面接辞退のご連絡(氏名) |
|---|---|
| 本文 | 株式会社□□ 人事部 採用ご担当者様 お世話になっております。 〇月〇日〇時より、二次面接のお約束をいただいております、〇〇と申します。 この度は、面接の機会を設けていただき、誠にありがとうございます。 大変申し訳ございませんが、一身上の都合により、この度の選考を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。 お忙しい中、貴重なお時間を割いていただいたにもかかわらず、このようなご連絡となりましたこと、心よりお詫び申し上げます。 末筆ではございますが、貴社の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。 (署名) |
こちらからお願いしたことに関するよくある質問
こちらからお願いしたことを断る際、皆さんが疑問に思われがちな点についてQ&A形式で解説します。ここでの情報が、皆さんの疑問を解消する一助となれば幸いです。
お願いしていたことを断る言い方は?
お願いしていたことを断る際は、感謝とお詫びの気持ちを明確に伝えることが重要です。
- クッション言葉: 「誠に申し訳ございませんが」「大変恐縮ですが」
- 断りの表現: 「今回は見送らせていただくことになりました」「辞退させていただきたく存じます」
- 感謝の言葉: 「ご提案いただき、誠にありがとうございました」「貴重なお時間を割いていただき、感謝申し上げます」
これらの言葉を組み合わせ、「大変恐縮ですが、今回は見送らせていただきます。ご丁寧にご提案いただき、誠にありがとうございました。」のように伝えます。
メールでの丁寧な断り方の例文は?
メールで丁寧に断る際の、汎用的な例文です。
「社内で検討いたしました結果、誠に残念ながら、今回はご期待に沿えない結果となりました。ご多忙の折、ご対応いただきましたこと、心より感謝申し上げます。またの機会がございましたら、ぜひよろしくお願い申し上げます。」
このように、感謝 → 断り → 今後への期待という構成で書くと、丁寧な印象になります。
依頼を断るメールの例文は?
相手からの依頼を断る場合は、以下のような例文が考えられます。
「この度は、〇〇の件でご依頼いただき、誠にありがとうございます。せっかくお声がけいただきましたところ大変恐縮ですが、現在、弊社のリソースではご期待に沿うことが難しく、今回は辞退させていただきたく存じます。またお力になれる機会がございましたら幸いです。」
ポイントは、断る理由を簡潔に述べ(詳細な説明は不要)、相手の期待に応えられないことへのお詫びを示すことです。
角が立たない断り方の例文は?
角が立たないように断るためには、相手への敬意と、肯定的な言葉を盛り込むのが効果的です。
「この度は、誠に魅力的なご提案をいただき、ありがとうございます。〇〇様の素晴らしいご提案に大変心惹かれましたが、社内での検討の結果、今回は弊社の要件と合致する別の案を採用することとなりました。また何か機会がございましたら、ぜひお声がけいただけますと幸いです。」
このように、相手の提案を一度肯定的に受け止めることで、断りの印象を和らげることができます。
まとめ
一度はこちらからお願いした案件を、後から断らなければならないという状況は、非常に気まずく、心苦しいものです。しかし、誠実な対応と、相手への配慮のこもった丁寧な言葉選びを心がけることで、相手の理解を得て、今後の良好な関係を維持することは十分に可能です。
お断りのメールを書く際の最も重要なポイントは、
- 迅速に連絡すること
- 対応していただいたことへの感謝をまず伝えること
- 「大変恐縮ですが」といったクッション言葉を使い、お詫びの気持ちと共に、断りの意思を明確に伝えること
- 「また別の機会がございましたら」といった、今後の関係を閉ざさない一言を添えること
です。断る理由は、相手を傷つけない範囲で簡潔に述べるか、場合によっては省略する方が誠実な場合もあります。
この記事を通じて、「こちらからお願いしておきながら断る」という難しい場面でのメールの書き方、失礼のない敬語表現、そして具体的な例文についての疑問が解消され、自信を持って、そして誠意をもって相手に対応できるようになる一助となれば幸いです。


