会社の給与明細や、求人情報などで目にする「賞与(しょうよ)」。多くの人にとっては「ボーナス」という言葉の方が馴染み深いかもしれませんが、「賞与って、一体何のこと?」「平均で給料の何ヶ月分くらいもらえるものなの?」「基本給とどう関係するの?」など、その仕組みや計算方法について、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな「賞与(ボーナス)」に関するあらゆる疑問を徹底的に解消します! 賞与の基本的な意味から、ボーナスとの違い、そして最も気になる「平均で何ヶ月分もらえるのか」という相場、さらには支給額の計算方法や、手取り額が減る理由まで、詳しく解説していきます。この記事を読めば、賞与に関する正しい知識が身につき、自分の給与体系への理解も深まるはずです。
賞与(ボーナス)とは?その基本的な意味と役割
賞与は、多くの会社員にとって、日々の労働意欲を高める重要な要素です。まずは、賞与がどのような性質を持つ給与なのか、その基本的な意味と役割を確認しましょう。
賞与の定義:毎月の給与とは別に支払われる特別な給料
賞与とは、毎月決まって支払われる定期給与とは別に、臨時に支払われる給料のことです。一般的に、「ボーナス」や「期末手当」「夏季手当」「冬季手当」などとも呼ばれます。
賞与の主な特徴
- 非定期的な支給: 毎月ではなく、夏と冬の年2回、あるいは会社の業績に応じて期末に年1回など、特定の時期に支給されます。
- 変動性: 支給額は、会社の業績や個人の勤務成績(評価)によって変動します。
- 法律上の義務ではない: 毎月の給与とは異なり、法律で支給が義務付けられているわけではありません。就業規則や労働協約に定めがある場合に、会社は支払いの義務を負います。
賞与とボーナスの違いは?
「賞与」と「ボーナス」は、基本的には同じものを指します。
言葉の使い分け
- 賞与: 法律や、企業の就業規則、給与明細などで使われる正式な法律用語・会計用語です。
- ボーナス: 「賞与」を指す、より一般的で口語的な表現です。英語の「bonus(特別な手当、報奨金)」に由来します。
したがって、日常会話では「ボーナス」、正式な場面や書類では「賞与」と使い分けられることが多いですが、指しているものは同じです。
賞与は平均で何ヶ月分もらえる?気になる相場を解説
多くの人が最も気になるのが、「賞与は平均で給料の何ヶ月分くらいもらえるのか?」という点でしょう。この相場は、様々な要因によって変動します。
一般的な支給額の目安:「基本給の〇ヶ月分」
賞与の支給額は、多くの場合、「基本給の〇ヶ月分」という形で計算されます。
支給額の一般的な相場
- 夏と冬の年2回支給の場合:
- 夏(6月〜7月頃): 基本給の1ヶ月分〜1.5ヶ月分程度。
- 冬(12月頃): 夏よりもやや多く、基本給の1.5ヶ月分〜2ヶ月分程度。
- 年間合計: 年間で2.5ヶ月分〜3.5ヶ月分程度が、一般的な相場とされています。
- 大企業や業績好調な企業: 年間で4ヶ月分〜6ヶ月分以上の賞与が支給されるケースもあります。
- 中小企業や業績不振な企業: 年間で1ヶ月分〜2ヶ月分程度、あるいは支給がない場合もあります。
賞与額を左右する主な要因
賞与の支給額(何ヶ月分か)は、以下の様々な要因によって決定されます。
賞与額の変動要因
- 会社の業績: 最も大きな要因です。会社の業績が良ければ支給額は増え、悪ければ減る、あるいは支給されないこともあります。
- 個人の勤務成績(評価): 個人の業績評価(査定)によって、同じ基本給でも支給額に差が出ます。
- 役職・等級: 役職や社内の等級が上がるほど、支給月数も増える傾向にあります。
- 勤続年数: 勤続年数が長いほど、支給額が増える場合があります。
- 企業の規模: 一般的に、大企業の方が中小企業よりも支給月数が多い傾向にあります。
- 業種: 金融業界や、一部の製造業、IT業界などは、比較的支給月数が多いと言われることがあります。
これらの要因が複合的に絡み合い、個人の賞与額が決定されます。
賞与の計算方法と手取り額の仕組み
「基本給の2ヶ月分」と聞いて、単純に基本給を2倍した金額がそのままもらえる、と思っていませんか? 実は、賞与からも税金や社会保険料が引かれるため、手取り額は額面よりも少なくなります。
賞与の計算方法:「基本給」が基準
賞与の計算で基準となるのは、「基本給」です。
基本給とは
- 毎月の給与の基本となる、固定的な賃金のことです。
- 各種手当(残業代、通勤手当、役職手当、住宅手当など)は、通常、賞与の計算基準には含まれません。
賞与額の計算式
- 賞与の額面(総支給額) = 基本給 × 支給月数 × 個人の評価係数
例えば、基本給25万円、支給月数2ヶ月、評価係数1.0(標準評価)の場合、
25万円 × 2ヶ月 × 1.0 = 50万円
が、賞与の額面金額となります。
賞与から天引きされるもの:税金と社会保険料
賞与の額面金額から、以下の税金と社会保険料が天引き(控除)され、残った金額が「手取り額」として振り込まれます。
賞与から引かれる主なもの
- 健康保険料: 標準賞与額に保険料率を掛けて計算されます。
- 介護保険料: 40歳以上の場合に引かれます。
- 厚生年金保険料: 標準賞与額に保険料率を掛けて計算されます。
- 雇用保険料: 標準賞与額に保険料率を掛けて計算されます。
- 所得税(源泉徴収税): 賞与の額面から社会保険料を引いた後の金額と、前月の給与額、扶養親族の数によって税率が決まります。
手取り額の計算方法と目安
手取り額の計算式
- 賞与の手取り額 = 賞与の額面 - (健康保険料 + 介護保険料 + 厚生年金保険料 + 雇用保険料 + 所得税)
手取り額の目安
- 天引きされる金額は、個人の状況によって異なりますが、一般的に賞与額面の約75%〜85%程度が手取り額の目安とされています。
- つまり、額面で50万円の賞与の場合、手取り額は約37.5万円〜42.5万円程度になる計算です。
「思ったより手取りが少ない…」と感じるのは、これらの税金や社会保険料が引かれているためです。
賞与と給料、退職金、寸志との違い
賞与に関連する、他の給与形態との違いも理解しておきましょう。
「給料」との違い:定期的か臨時的か
- 給料: 毎月決まった日に支払われる、定期的な賃金。法律で支払いが義務付けられています。
- 賞与: 夏や冬など、特定の時期に支払われる、臨時的な賃金。法律で支払いが義務付けられているわけではありません。
「退職金」との違い:支給のタイミングと目的
- 退職金: 従業員が退職する際に支払われる、長年の功労に報いるための賃金。
- 賞与: 従業員が在職中に支払われる、会社の業績や個人の貢献に報いるための賃金。
「寸志」との違い:金額と意味合い
- 寸志(すんし): 「少しばかりの心遣い」という意味で、会社から従業員へ与えられる、少額のボーナスのこと。
- 賞与: 寸志よりも金額が大きく、より正式な制度として運用されていることが多いです。
寸志は、特に業績が良かった場合や、小規模な会社などで、正規の賞与とは別に支給されることがあります。
よくある質問(Q&A)
賞与(ボーナス)について、さらによくある疑問点にお答えします。
Q1: 賞与(ボーナス)なしの会社は違法ですか?
いいえ、賞与なしの会社は違法ではありません。
賞与の法的義務
- 労働基準法では、毎月の給与(賃金)の支払いは義務付けられていますが、賞与の支払いについては、法律上の義務はありません。
- 賞与が支払われるかどうか、そしてその金額や計算方法は、各企業の就業規則や労働契約によって定められます。
- 就業規則などに「賞与を支給する」という定めがあるにもかかわらず、支払われない場合は、契約違反となる可能性があります。
Q2: パートやアルバイトでも賞与はもらえますか?
パートやアルバイトでも、賞与がもらえる可能性はあります。
パート・アルバイトの賞与
- 会社の規定による: 会社の就業規則や、パート・アルバイトの雇用契約書に「賞与支給あり」と記載されていれば、支給されます。
- 同一労働同一賃金: 近年、「同一労働同一賃金」の考え方が広まり、正社員と同じ仕事をしている非正規雇用の労働者に対しても、賞与を支給すべきだという考え方が強まっています。
- 寸志として: 正規の賞与ではなく、「寸志」として少額の手当が支給されるケースもあります。
契約内容をよく確認することが重要です。
Q3: 賞与の査定期間はいつですか?
賞与の金額を決定するための評価(査定)が行われる期間は、会社によって異なりますが、一般的には以下のようになっています。
査定期間の目安
- 夏の賞与(6月〜7月支給): 前年の10月〜当年3月頃の業績・勤務成績が評価対象。
- 冬の賞与(12月支給): 当年の4月〜当年9月頃の業績・勤務成績が評価対象。
査定期間や評価基準については、自社の就業規則や人事評価制度を確認しましょう。
Q4: 賞与が基本給の1ヶ月分というのは少ないですか?
賞与が基本給の1ヶ月分というのは、一概に「少ない」とは言えません。
支給月数の評価
- 年間の合計月数で判断: 夏・冬合わせて、年間の合計支給月数がどのくらいになるかで判断するのが一般的です。例えば、夏1ヶ月、冬1.5ヶ月であれば、年間で2.5ヶ月となり、これは平均的な水準と言えます。
- 会社の規模や業績による: 大企業の平均と比較すれば少なく感じるかもしれませんが、中小企業や、業績が厳しい状況であれば、1ヶ月分でも支給されること自体がありがたい、と考えることもできます。
自分の会社の状況や、業界の平均などと比較して、総合的に判断しましょう。
まとめ
賞与(ボーオン)とは、毎月の給与とは別に支払われる特別な給料であり、その支給額は多くの場合、「基本給の〇ヶ月分」という形で計算されます。
- 平均的な相場: 夏と冬を合わせて、年間で基本給の2.5ヶ月分〜3.5ヶ月分程度が一般的な相場とされていますが、会社の業績や規模、個人の評価によって大きく変動します。
- 計算の基準: 賞与の計算基準となるのは、各種手当を含まない「基本給」です。
- 手取り額: 賞与の額面から、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税といった社会保険料や税金が天引きされるため、実際の手取り額は額面の約75%〜85%程度になります。
- 法的義務: 賞与の支給は法律で義務付けられておらず、企業の就業規則などによって定められています。
賞与は、日々の努力が評価され、形として還元される、働く上での大きなモチベーションとなります。この記事で解説した情報を参考に、ご自身の賞与への理解を深め、今後のキャリアプランやライフプランを考える上での一助としてください。