「〇〇さんに会わせてほしい」「一度会わせていただけませんか?」など、誰かに別の人を紹介してもらいたい時や、会う機会を作ってほしい時に使う「会わせて」という言葉。日常会話やビジネスシーンでも耳にすることがありますが、その正確な意味や、「合わせて」との違い、そして目上の人に使う際の敬語表現などをしっかり理解できているでしょうか? この記事では、「会わせて」の意味、混同しやすい「合わせて」との違い、丁寧な言い換え表現、そして状況に応じた適切な使い方について詳しく解説します。
「会わせて」の基本的な意味と使い方
まず、「会わせて」という言葉が持つ基本的な意味と、文法的な成り立ちを見ていきましょう。
使役動詞「会わせる」の連用形
「会わせて」は、動詞「会う(あう)」の使役形である「会わせる(あわせる)」の連用形(て形)です。「使役」とは、誰かに何かをさせる、という意味合いを持ちます。
つまり、「会わせる」は「(誰かに)会うようにさせる」「会う機会を作る」という意味になります。そして、「会わせて」はその「て形」なので、依頼や要求、あるいは文脈をつなぐ形で使われます。
- 例:
- 彼に会わせる。→ (私が)彼に(誰かを)会うようにする。
- 彼に会わせてください。→ (私に)彼と会う機会を作ってください。
具体的な例文(人に会う機会を作る依頼)
「会わせて」は、主に第三者に、別の人と会うセッティングをお願いする場面で使われます。
- 例文:
- 「ぜひ、担当の佐藤さんに会わせていただけますでしょうか。」
- 「一度でいいから、憧れの作家に会わせてほしい。」
- 「彼が信頼しているという弁護士に、私を会わせてもらえませんか?」
- 「子供たちを久しぶりに祖父母に会わせてあげたい。」
このように、自分自身が誰かに会いたい場合や、誰か別の人同士を引き合わせたい場合に用いられます。
混同しやすい「合わせて」との違い
「会わせて」と音が同じで混同しやすいのが「合わせて」です。漢字が違うため、意味も全く異なります。違いをしっかり理解しておきましょう。
「会う」と「合う」の漢字の意味の違い
二つの言葉の違いは、動詞の元となる漢字「会」と「合」の意味の違いにあります。
- 会う(あう):
- 人と人が対面する、面会する。
- 偶然に出くわす。
- (よくないことに)遭遇する。(例:事故に遭う ※この場合は「遭う」)
- → 「会わせて」は、人と人が対面する機会を作る意味。
- 合う(あう):
- 二つ以上のものがぴったりと一つになる、一致する。
- 調和する、適合する。
- 正しい、合致する。
- 互いに何かをする。(例:話し合う)
- → 「合わせて」は、何かを一致させたり、調和させたりする意味。
使い分けのポイントと例文比較
具体的な使い方で比較してみましょう。
表現 | 意味 | 例文 |
---|---|---|
会わせて | 人と人が対面する機会を作る | ・担当の方に会わせてください。 ・旧友に会わせてあげたい。 |
合わせて | 一致させる、調和させる、合計する | ・意見を合わせて結論を出そう。 ・二人の力を合わせて頑張ろう。 ・全部合わせていくらですか? ・音楽に合わせて踊る。 |
「誰と誰が」対面するかどうか、という「人」が関わる場合は「会わせて」、「物事」を一致させたり、合計したりする場合は「合わせて」と考えると分かりやすいでしょう。
「会わせて」を丁寧に伝える敬語表現
「会わせてほしい」とストレートに言うと、状況によっては少し強引に聞こえたり、失礼にあたったりする可能性があります。特にビジネスシーンや目上の人に対して使う場合は、丁寧な敬語表現を用いることが大切です。
目上の人に使う際の注意点
「~させてください」という表現は、相手に許可を求める形ではありますが、使役のニュアンスを含むため、相手によっては「強制されている」と感じる可能性もゼロではありません。より丁寧さを心がけるなら、相手の都合を伺う形や、紹介をお願いする形にすると良いでしょう。
言い換え表現:「お会いさせていただけますでしょうか」など
「会わせて」をより丁寧に伝えるための言い換え表現をいくつか紹介します。相手や状況に合わせて使い分けましょう。
- お会いさせていただけますでしょうか/いただけませんでしょうか
- 例:「〇〇様(部長など役職名)にお会いさせていただけますでしょうか。」
- 自分が会いたい場合に使う、比較的丁寧な表現です。
- ご紹介いただけますでしょうか/いただけませんでしょうか
- 例:「先日お話しされていた△△社の□□様をご紹介いただけますでしょうか。」
- 仲介をお願いするニュアンスが明確になります。
- お引き合わせ願えますでしょうか/願えませんでしょうか
- 例:「恐れ入りますが、〇〇様とのお引き合わせをお願いできませんでしょうか。」
- 「引き合わせる」という言葉を使った、よりフォーマルな依頼表現です。
- お目にかかる機会をいただけませんでしょうか
- 例:「〇〇様には、ぜひ一度お目にかかる機会をいただけませんでしょうか。」
- 「会う」の謙譲語「お目にかかる」を使った非常に丁寧な表現です。
これらの表現を使う際は、なぜ会いたいのかという理由も簡潔に添えると、相手も状況を理解しやすくなります。
状況に応じた「会わせて」のニュアンス
「会わせて」という言葉は、使う相手や状況によって、その響きや受け取られ方が変わることがあります。
ビジネスシーンでの依頼の仕方
ビジネスシーンで「会わせてほしい」と依頼する場合は、前述の敬語表現を使うことに加え、以下の点に注意するとスムーズです。
- 理由を明確に伝える: なぜその人に会いたいのか、目的を具体的に伝えましょう。(例:「〇〇の件でご相談したく、担当の佐藤様にお会いさせていただけますでしょうか。」)
- 相手への配慮: 相手の都合を考慮し、一方的な要求にならないようにしましょう。(例:「もしご都合がよろしければ」「お忙しいところ恐縮ですが」)
- 誰に依頼するか: 紹介を依頼する相手との関係性も考慮し、無理なお願いにならないように注意が必要です。
プライベートでの使い方
親しい友人や家族に対して使う場合は、「〇〇さんに会わせてよ!」のように、よりフランクな言い方になることもあります。ただし、あまりにも強い口調だと、やはり強引な印象を与えかねません。「会わせてほしいな」「会えるように頼んでみてくれない?」など、少し柔らかい表現を心がけると良いでしょう。
Q&A|「会わせて」に関するよくある質問
「会わせて」という言葉に関する、その他の疑問についてお答えします。
「会わせてほしい」と言うのは失礼ですか?
相手との関係性や状況によります。親しい間柄であれば問題ないことが多いですが、ビジネスシーンや目上の人に対して、理由も説明せずに「会わせてほしい」とだけ言うのは、唐突で失礼にあたる可能性があります。丁寧な言葉遣いを心がけ、なぜ会いたいのかを伝えることが大切です。「~ほしい」という言い方自体が、やや一方的な要求に聞こえる場合もあるため、「~いただけませんか?」のような依頼形を使う方が無難です。
「会わせて」の英語表現は?
「会わせて」を英語で表現する場合、状況に応じて様々な言い方が考えられます。
- Could you introduce me to Mr./Ms. 〇〇? (〇〇さんに私を紹介していただけますか?)
- 紹介を依頼する丁寧な表現です。
- Could you arrange a meeting with Mr./Ms. 〇〇? (〇〇さんとの面会をセッティングしていただけますか?)
- 会議などのセッティングを依頼する表現です。
- I’d like to meet Mr./Ms. 〇〇. (〇〇さんにお会いしたいのですが。)
- 会いたいという希望を伝える表現。この後に紹介を頼む流れになります。
- Let me meet him/her. (彼/彼女に会わせて。)
- 親しい間柄で使う、やや直接的な表現です。
文脈に合わせて適切な表現を選ぶ必要があります。
子供を誰かに会わせる時はどう言えばいい?
子供を祖父母や親戚などに会わせる機会を作りたい場合は、「(子供を)〇〇に会わせてあげたい」「〇〇に会わせてもいいかな?」のように使います。相手に許可を求める場合は「〇〇に会わせていただけますか?」のように言うこともできます。
まとめ
「会わせて」は、「(誰かに)会うようにさせる」「会う機会を作る」という意味を持つ使役動詞「会わせる」の連用形です。人に会う機会のセッティングを依頼する際によく使われます。
音が同じ「合わせて」は、「一致させる」「調和させる」などの意味で使われるため、漢字と意味の違いに注意が必要です。
目上の人やビジネスシーンで使う場合は、「お会いさせていただけますでしょうか」「ご紹介いただけますでしょうか」「お引き合わせ願えますでしょうか」といった丁寧な敬語表現を用い、理由を添えて相手に配慮しながら依頼することが大切です。状況に応じて適切な言葉遣いを心がけ、円滑なコミュニケーションを図りましょう。