結婚式の招待状や、会社の式典、祝賀会などのフォーマルな案内状で、「ご臨席賜りますようお願い申し上げます」といった一文を目にしたことはありませんか? 「臨席」という言葉には、どこか格式高い、厳かな響きがありますが、その正確な意味や、「ご列席」との違い、そして招待状への返信の際にどう書けば良いのか、詳しく知らない方も多いかもしれません。この記事では、「ご臨席いただき」という言葉の基本的な意味から、非常によく似た「ご列席」との決定的な違い、そして「ご臨席賜る」という敬語表現の正しい使い方を、具体的な例文を交えながら詳しく解説していきます。
フォーマルな場面での言葉遣いは、その人の品格や教養を示す重要な要素です。この記事を読めば、「ご臨席」に関する疑問が解消され、結婚式や式典といった大切な場面で、自信を持って、正しい言葉遣いができるようになるはずです。
「ご臨席」とは?基本的な意味と敬意の度合い
「ご臨席」は、特定の人がその場にいることを敬って言う、非常に丁寧な言葉です。まずは、その基本的な意味と、どのような相手に対して使うのかを確認しましょう。
「臨席」の言葉の成り立ちと意味
「臨席(りんせき)」とは、「その席に臨むこと」、つまり「式や会合などに出席すること」を意味する言葉です。
- 臨(りん): 「その場所に行く」「物事にのぞむ」といった意味を持つ漢字です。
- 席(せき): 「座席」「場所」「会合」といった意味を持ちます。
この二つの漢字が組み合わさることで、「特定の席(会合)にのぞむ=出席する」という意味になります。これに、尊敬の接頭語である「ご」を付けたのが「ご臨席」であり、他人がその場に出席することを敬って言う尊敬語です。
「ご臨席」は誰に使う?対象となる人物
「ご臨席」は、誰にでも使えるわけではありません。その会合において特に重要な立場にある、限られた人物に対して使われる、最上級の敬意表現です。
- 主賓(しゅひん): 結婚式での来賓代表や、式典で最も重要なゲスト。
- 来賓(らいひん): 式典やイベントなどに、招待されて来たお客様。特に地位の高い方々。
- 皇族・王族: 皇室の方々や、海外の王族など。
- 会社の役員・社長: 会社の記念式典などにおける、自社の役員や社長。
このように、「ご臨席」は、その場に「のぞむ(臨む)」ことが、会合全体の格を高めるような、非常に重要なゲストに対して使われる、特別な敬意を込めた言葉です。
【つまずきやすいポイント】「ご臨席」と「ご列席」「ご出席」の決定的な違い
「ご臨席」と非常によく似た言葉に、「ご列席(ごれっせき)」や「ご出席(ごしゅっせき)」があります。どれも「出席する」という意味で使われますが、その対象となる人物や、ニュアンスには明確な違いがあります。この違いを理解することが、正しい言葉遣いの鍵となります。
「ご臨席」と「ご列席」の違いを比較表で解説
| 表現 | 対象となる人物 | ニュアンス | 主な使用場面 |
|---|---|---|---|
| ご臨席 | 主賓、来賓など、特に重要な人物(少数) | 最上級の敬意、その人の出席が会合の格を高める | 結婚式の主賓への依頼、会社の記念式典での来賓紹介 |
| ご列席 | 一般の出席者、参列者(多数) | その場に出席している人々全体への丁寧な呼びかけ | 結婚式の司会進行「ご列席の皆様」、入学式・卒業式の式辞 |
「列席」の「列」という漢字が「並ぶ」「連なる」という意味を持つことからも分かるように、「ご列席」は、その場に「列なって(連なって)席に着いている」多くの出席者を指す言葉です。
【覚え方のヒント】
- 「臨む」という漢字の重みを考え、「ご臨席」は「特別なゲスト」に使う。
- 「列なる」という漢字のイメージから、「ご列席」は「大勢の出席者」に使う。
「ご出席」との関係性と丁寧さの序列
「ご出席」は、「出席する」の丁寧語であり、「ご列席」とほぼ同じ意味合いで、幅広い参加者に対して使えます。丁寧さの度合いで言うと、以下のようになります。
「ご臨席」>「ご出席」≒「ご列席」
したがって、主賓や特別な来賓に対して「ご出席ありがとうございます」と言うよりも、「ご臨席いただき、誠にありがとうございます」と言う方が、より高い敬意を示すことができます。
最上級の敬意を表す「ご臨席賜る」の意味と使い方
「ご臨席」という言葉は、しばしば「賜る(たまわる)」という言葉とセットで使われます。これは、相手への敬意を最大限に高めるための、非常に重要な敬語表現です。
「賜る(たまわる)」の意味と読み方
「賜る(たまわる)」は、「もらう」「いただく」の謙譲語です。謙譲語は、自分や自分の側の者をへりくだって表現することで、相手への敬意を高める言葉です。
- 読み方: たまわる
- ニュアンス: 相手からの行為を、ありがたく頂戴するという、深い感謝と敬意の気持ちを表します。
「ご臨席賜りますよう」など招待する側の例文
「ご臨席」と「賜る」を組み合わせた「ご臨席賜る(ごりんせきたまわる)」は、「(相手に)出席していただく」という行為を、相手への最上級の敬意と、深い感謝の気持ちを込めて表現する、非常に丁寧な言い方です。主に、招待状や、スピーチなどで、招待する側が使います。
- (結婚式の招待状で)
- 「ご多忙中とは存じますが、ぜひともご臨席を賜り、私たちの門出をお祝いいただきたく存じます。」
- (会社の記念式典の案内状で)
- 「つきましては、下記の通り記念祝賀会を執り行いますので、ご多忙中恐縮ではございますが、万障お繰り合わせの上、ご臨席賜りますようお願い申し上げます。」
- (来賓としてご臨席いただく場合)
- 「〇〇様には、来賓としてご臨席賜りますよう、謹んでお願い申し上げます。」
「ご臨席いただきありがとうございます」など感謝を伝える側の例文
招待したゲストが実際に出席してくれた際に、感謝の気持ちを伝える場合にも使われます。
- (スピーチの冒頭で)
- 「本日は、ご多忙の折、〇〇市長にご臨席いただき、誠にありがとうございます。」
- (イベント終了後のお礼状で)
- 「先日の弊社創立50周年記念式典におきましては、ご臨席賜り、また心のこもったご祝辞まで頂戴し、厚く御礼申し上げます。」
【実践編】「ご臨席」と書かれた招待状への正しい返信マナー
もし、自分が「ご臨席賜りますよう」と書かれた招待状を受け取った場合、返信する際には、その言葉をどのように扱えば良いのでしょうか?
なぜ「ご臨席」をそのまま使ってはいけないのか?
招待状に書かれている「ご臨席」は、招待する側が、あなた(招待された側)への敬意を示すために使っている尊敬語です。返信する際は、自分自身の行動に対して尊敬語を使うのは誤りなので、この言葉をそのまま使うことはできません。
出席する場合の返信例文と言い換え表現
招待状への返信では、「ご臨席」を、自分をへりくだって表現する謙譲語に言い換える必要があります。
- 基本的な言い換え:
- 出席いたします
- 出席させていただきます
- 喜んで出席させていただきます
- 返信ハガキの書き方:
- 招待状の出欠ハガキでは、「御出席」の「御」を二重線で消し、「出席」を丸で囲みます。
- その前後に、「慶んで(喜んで)」や「させていただきます」といった言葉を書き加えると、より丁寧な印象になります。
欠席する場合の丁寧な断り方
やむを得ず欠席する場合は、お祝いの言葉と、欠席の理由を簡潔に述べます。
- 返信ハガキの書き方:
- 「御欠席」の「御」を二重線で消し、「欠席」を丸で囲みます。
- 「あいにく先約がございまして、誠に残念ながら欠席させていただきます。お二人の末永いお幸せを心よりお祈り申し上げます。」といったメッセージを添えます。
「ご臨席」に関するよくある質問
「ご臨席」という言葉について、さらによくある疑問点にお答えします。
「ご臨席いただく」とはどういう意味ですか?
「ご臨席いただく」とは、「出席していただく」の尊敬語表現です。「臨席」が出席を意味し、「ご~いただく」という形にすることで、相手の出席という行為を高め、敬意を示しています。「ご多忙の折、ご臨席いただきありがとうございます」といった形で、感謝を伝える際によく使われます。
ご列席とご臨席の違いは?
最も大きな違いは、対象となる人物の範囲です。
- ご臨席: 主賓や来賓など、特に重要な立場にある、限られた人物に対して使います。
- ご列席: 一般の出席者や参列者など、その場にいる多くの人々に対して使います。
「ご列席の皆様」というように、大勢に呼びかけるのが「ご列席」、「〇〇様にご臨席いただき」というように、特定の個人を指すのが「ご臨席」と覚えると分かりやすいです。
「ご列席いただき」とはどういう意味ですか?
「ご列席いただき」とは、「出席していただき」の丁寧な表現です。「ご列席」は、「ご出席」とほぼ同じ意味合いで、その場に参加している人々全体に対して使われます。「本日はご列席いただき、誠にありがとうございます」といった形で、司会者が開会の挨拶などで使うことが多いです。
「臨席」の例文は?
「臨席」という言葉は、尊敬の接頭語「ご」を付けずに使われることもあります。
- 「大臣が式典に臨席した。」
- 「裁判官の臨席のもと、審理が始まった。」
このように、客観的な事実として、地位の高い人物が出席したことを記述する際に使われます。
まとめ
「ご臨席」は、「その場に出席すること」を敬って言う尊敬語で、「ごりんせき」と読みます。この言葉は、結婚式の主賓や、式典の来賓など、特に重要な立場にある、限られた人物に対して使われ、最上級の敬意を示します。
「ご列席」や「ご出席」が一般の参加者も含めた多くの人々を対象とするのに対し、「ご臨席」は、その人の出席が会合の格を高めるような、特別なゲストに限定して使われるという明確な違いがあります。
「ご臨席賜る(ごりんせきたまわる)」は、「ご臨席」に謙譲語の「賜る」を組み合わせた、さらに丁寧な表現で、主に招待する側が招待状やスピーチで使います。もし自分が「ご臨席賜りますよう」と書かれた招待状を受け取った場合は、返信する際に「ご臨席」という言葉は使わず、「(喜んで)出席させていただきます」のように、謙譲語に言い換えるのが正しいマナーです。
この記事で解説した情報を参考に、「ご臨席」という言葉の正しい意味と使い方をマスターし、フォーマルな場面でも自信を持って、円滑なコミュニケーションを築いてください。



